久米島の企業の魅力を知る
『地元に愛される会社に』 株式会社與那嶺商会
『地元に愛される会社に』 株式会社與那嶺商会
株式会社與那嶺商会は今から60年ほど前に創業した久米島の老舗企業。現在の取締役の摺木幸雄(すりき・ゆきお)さんのお義父さんが会社を立ち上げ、清涼飲料水の配達や島のインフラである給油所の運営、他にもタクシーやバス会社の運営、車海老の養殖、板金屋など、島で様々な事業を行ってきたそうです。
代表の幸雄さんは元々千葉育ち。東京で奥さんに出会い、久米島の事業に関わることになったそうです。
「将来のことはあんまり考えていなかった。無我夢中でしたね。」
「未経験だったのに来ていきなり、タンクローリーを持ったり、オイル交換をさせられたり、大変でした、笑」
そう当時を振り返る幸雄さん。現在は、ガソリンスタンドの運営、清涼飲料水の代理店業、車海老の卸し・販売をメインに事業を行っています。
しかし、時代が変わり、昔のようには上手くいかなくなっているのも現実もあるそうです。そこで、アメリカに留学していた長男の摺木陽介(すりき・ようすけ)マネージャーと共に、ハワイアンカフェYUNAMI FACTORYの経営を2015年に開始しました。
「島の素材を生かす。」
そんな理念の下、YUNAMI FACTORYでは久米島産車海老を使った車海老バーガーやガーリックシュリンプ、他にも島の食材を使った商品の販売・開発に取り組んでいます。
「食を通して、人のつながりを作っていければなって。例えば、ここに来てくれた島の人がSNSに投降して、それを見た観光客がお店に来てくれたり。そんなつながりを作って、地域を盛り上げたいなと思っています。」
元々アメリカから戻ってくる気もなかったという陽介さん。しかし、島の現状を知ってから、久米島のために何とかしたいと思うようになったそうです。
「自分も、毎年100人、人口が減っていることや内部の課題を知ってから真剣に考えるようになった。島から出た人も意外と現状を分かっていない人が多い。身近にならないと必死にならないですよね。」
「自分たちが成功事例になれたら、他の人も参入してくれるかもしれない。そういう風になったらいいなって思っています。」
地域を変えるにはまずは自分たちから。そこから自然発生的に周囲が盛り上がっていくことが陽介さんの理想なのだそう。
「ゆくゆくは久米島をブランド化したい。うちが出す商品がだんだん口コミで広まっていって、島外でも話題になったらそういうことができないかと思っています。だから商品もオシャレな感じに、いいものを作りたい。その先駆けとなれたらいいと思ってます。」
宮古や石垣よりも知名度に劣る久米島。全国1位の生産量を誇る久米島の車海老、紅芋など、島の産業が盛り上がりを見せる中、さらに販売を促進していくためにブランド力が必要なのだと言います。
実際に昨年度も、島の他事業所と協力して、『久米島made』というブランドの立ち上げに尽力していたそうです。しかし、その立脚点はあくまで久米島でなければならない。陽介さんはそのように考えています。
「うちらは地元で生きている会社。エビを売り始めてから外に出たりもしてるんですけど、基本的にはずっと久米島の人を相手にしているだけ。」
「久米島の人たちも来てくれるお店にしないと、自信をもって観光客の方にお勧めできないと思うんですよね。最初は観光客向けのメニューが多かったんですけど、最近はメニューも増やして、地元の方の利用も増えてきている。」
「原点はこっちですからね。」と代表の幸雄さんも言います。
「地域に支えられてずっとやってきている。観光客の方に来てもらえるような戦略も必要ですが、久米島の人たちを大切にしたいね。」
3年後もどうなるか分からない不確実な時代、そんなめまぐるしい現代において重要なことは、ぶれることのない自分たちの軸だと思います。長らく地元のためにビジネスを行ってきた與那嶺商会さんが大切にしていることは、地域に愛されるお店であること。
島に立脚し、島の発展を目指す、地元に根差した企業としてのあり方を学ばせていただきました。
インタビュー:岡本耕平