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まちづくりの鍵は「身の丈起業家」と「地元の人」!?まちづくり講演会書き起こし②

まちづくりの鍵は「身の丈起業家」と「地元の人」!?まちづくり講演会書き起こし②

3/5(火)に開催したまちづくり講演会「久米島の『次の一手』を考える」~地方創生のその先へ~。講演内容を書き起こしました。第2回は、一般社団法人ソシオデザイン代表理事 大西 正泰(おおにし まさひろ)氏の話の続きです。


前回記事:ソシオデザイン大西正泰氏が語る「まちづくりの基本原理」とは?【まちづくり講演会書き起こし①】 | 【沖縄・久米島の移住定住情報】島ぐらしガイド

 

身の丈起業家とは

大西氏:そういう、楽しい場所だったり、居心地がいい場所をベースに仕事を作っている人を、僕は「身の丈起業家」と呼んでいます。

今まで起業家って、どんなイメージがあったかといえば、男の人だとギラギラした感じ。女性の場合はキラキラした感じ。例えばね、女性起業家ってインターネットで調べると、こういうキラキラした人がトップに出てきて、男の人も調べると、みんな日焼けして黒いっていうね(笑)。僕が今思っているのは、もっと小さなことでいいので、何か身の丈ではじめてやってみたらと。

 

さて、「キラキラ・ギラギラ起業家」と「身の丈起業家」で同じところと何が違うのか。

 


先に同じところを説明すると、気持ち。起業っていうのはやるって言うのは順番一緒で、起業のは「己が走る」っていう書くんですよね。つまりやりたいことが最初にはっきりしていること。やりたいことがはっきりしないと、走れない。

例えば、学校の勉強がつまらないのは、学ぶ意味がわからずにやらせてるからつまんないんです。将来役に立つからって理由を言われても、役に立ったことを体験しないとわかんないわけです。だからやりたいことをまずはっきりさせていきましょうと。やりたいことを体感しましょうと。

で、もう一つは起業の。業は、わざとも読めます。修行すると得意業(わざ)になるわけです。そして業は「なりわい」とも読めて、得意技になると、お金が取れるようになる。

例えば、スポーツもそうですよね。プロ選手の人たちは、食べ物のような何か生活に必須なものを作っているわけじゃない。野球やサッカーがとにかくうまい。それがお金になってるわけですよね。

つまり自分が修行したことが、得意技になって他の人が真似できないレベルになると、これは「なりわい」になると。で、これは、自分が好きなことをやってますよね。だからここまでは、普通の起業と仕組みは一緒なんです。

 



じゃあ、ギラギラとかキラキラ起業家と違うのは、売上を縦にとって右に時間を取ると、ギラギラとかキラキラは、ギラギラ・キラキラするために、どんどん成長しないといけない(と思うようになる)。100店舗作ったら1000店舗作ろうっていう話になる。

そうじゃなく、身の丈の人達ってのは「上限」があって、自分の生活が幸せになるようにだいたいこのぐらい稼ごうと。上限のある成長、そういう考え方です。

今までは我々はギラギラ・キラキラ起業家が来ないと町がうまいこといかないって思い込んで、工業団地はじめ、いろんな企業をを呼んできたんですけれども、町になじまないことが多いし、売り上げが下がるといなくなっちゃうんですよね。だから、例えば工場は不景気になったとかで、中国いったり、いなくなっちゃうじゃないですか。

そうじゃなくて、いろんなことをやる人たちが出てきて、売上はちっちゃいかもしれないけれども、いろんなことをやる人たちがでてきて、自分のやりたいことが出来てるというのが、まちづくりの一つなんじゃないかと。

身の丈起業家は「社会の成長」が目的

だからまちづくりをやっている「身の丈起業家」っていうのは、社会、つまり自分の住んでいるまちが良くなることも目的になっているんです。

 


これは、「さくらや」っていう、僕の友達がやってる、制服をレンタルしてる会社なんですけども。子供がどんどん大きくなって制服を買わなきゃいけない、で多くのご家庭でも体の成長に合わせて、買い直しなどを考えないといけない。こういった多くの家庭の悩み解決をベースに、ご自身もシングルマザーで頑張って働かなきゃいけないっていうことで起業して。この6,7年の間に、43店舗まで拡大してます。規模が大きくなるとしても、主婦が抱えている課題の解決、子供の悩んでいる課題を解決している環境(街)になればと、やってるんですよね。

身の丈起業家を動かす「3つの行動原理」

じゃあ、身の丈起業家を増やすにはどうしたらいいのかって言ったら、実は面白い話があって。何かをやりたいことがあるときに、我々のなかの19%の人は、不安を感じにくい。81%の人は、何かやりたいって思った時に、不安が出てきてしまう

何かやりたいってなった時に、「本当にお客さん来るかな?」とか、「売上あがるかな?」って心配するのが我々8割です。けれども残りの19%の人は、やりたいっていったらやることしか思いつかなくて、どんどんやっちゃう。たまにいるじゃないですか、後先考えずにどんどん行っちゃう人ってのは、こういうタイプです。今までのキラキラギラギラって、ひょっとしたら、こういう人達だったと思うんですよね。

ここだけみると、「起業なんて、選ばれた人がやるものだ」になってしまいます。そうじゃなくて我々はこの81%の、どっちかって言ったら不安を抱えてしまう方。だから何かやりたいって言ったら、「責任取れるの?」みたいな、失敗したときの話が先に出ちゃう。


先に「面白いね」っていう言葉が出るんじゃなくて。そして失敗しないためにはどうしたらいいかを考え出すと、管理するんですよね。不安な人は。なぜかっていうと、管理すると動きが分かるから、何か失敗すると、すぐそこで止められる。だから管理って言葉を使っちゃうんですよね。けれども、管理は、起業で一番大事なやる気をどんどんそいでしまうんです。

 



さらに、もうちょっと詳しくみていきます。人の心を動かす気持ちっていうのがあるとすると三つに大きく分類してみました。例えば安心安全を考える全体の81%の人。こういう人たちは、安心じゃないと何かすることができない

もう一つ、好奇心、ワクワクするっていうのがメインに来る人達がいます。

 

で、もう一つは自分が成長したいとか、野心を持っている人。

 

この三つの気持ちが何かをするときに、くるくる回っていると思ってください。

 

農耕民・遊牧民・狩猟民と田舎の問題

最終的に一番下の分母が大きい、一番安心安全を重視する人達っていうのを、僕は農耕民って呼んでる。一番下に好奇心が来る人達っていうのは、ワクワクしてどんどん移動するんで、遊牧民。成長できる場を求めて移動する野心の人を僕は狩猟民と呼んでいます。

そうすると、ワクワクしたい人ってのは、ずっとワクワクしていたいので、どんどんどんどん外に出て行くんで、田舎からいなくなっていきます。

野心のある成長したい人も、成長したいので、「地方でうまくいったら次は大都市だ」みたいに、やはりどんどん移動していくんです。つまり、田舎には安心安全なまちづくりをやっていこうっていう人たちが、相対的に多くなってしまうという問題があるんですね。

 

身の丈起業家を増やすには

ということは、逆に言うと、ワクワクしたいとか、久米島に来ると成長できるっていうものがないと人が来ない。そんな環境を作っていかなきゃいけない。ワクワクする人が来たり、成長することができるプロジェクトを組んでいかないとうまくいかないんです。

 



実はそれをやっているのが久米島高校魅力化プロジェクト。久米島高校で行っているのは最近出たPBL(プロジェクトベースドラーニング)っていう、プロジェクトを通じて学んでいくという学習方法です。最近では、Pの部分をプロジェクト(課題設定学習)やプロブレム(問題解決学習)とかプレス(地域学習)と言い換えて、学習をするんですけれども。要は問題を解決しながらまちづくりに参画していて、面白いことをどんどんやっていくっていうのをやっているんです。だから一足先に、久米島では高校生の方がやってるんです

これをちょっと見てもらいたいんですけれども、僕が実際にそういうワクワクする仕組みっていうのを、人口1500人ぐらいの上勝町でどうやって作ってきたのかっていう動画です。

これは僕が2番目に空き家改装してやり始めたところで、山奥に古民家があって、そこを借りてシェアカフェをやっていました。で、ここには、日替わり店長さんがいる。一回来てみて下さい、すごい山奥なんで。

シェアカフェの店長は最大28人ぐらいいて、半分ぐらい起業したんですよ。(今は実はシェアカフェはもうなくて、シェアカフェでバーをやっていた人が会社を作って、頑張ってます。)

これ、どういうことかって言うと、世の中には店長さんはたくさんいるのに、起業する人はいない。ということは、店長さんと同じ状態にしてあげれば、安心して起業できるんじゃないか。ってことで、用意したわけですよね、最初にお店と食器類を。だから自分が食材を持っていけば、もうお店を出せるようにしている。そうすると、安心ですよね。

で、いろんな人が参画して、どうなるかって言ったら、自分がワクワクするようなことをしたいから来ているので、自由に安心して取り組める場があると、好奇心がある人たちが来るわけです。 実際28人のうちの20人強ですね、この人達は徳島市内からわざわざ1時間かけてお店を出しにきてたんです。

月に1回の人もいるんですけど、運営に必要な情報は全部ネットの中で共有していて、 週に1回、月に1回の人も、毎日営業していた情報が全部入ってくるんです、例えば「中華はあまり人が来ない」「温度が8度を切ると徳島市内から上がってこない」とか。これ、一人で学ぶのは大変ですよね。それが身につく。

そして、シェアカフェまつりっていう、全ての店長さんが集まってコンサートを開いたりする。すると、 一人の日替わり店長が10人のお客さんを持っていたとすると、28人店長がいたら280人のお客さんができるわけなんですよね。だから、ひとりでは膨らませられないお客さんを、一気に膨らますことができる。そういう形で、成長して卒業していく、ということをやってきたわけです。

地元の人が大事

 

その時に大事なのは、久米島の場合は地元の若い人かもしれないし、外から帰ってきた人かも分からないんですけれども、何かしらやりたいっていう人の環境づくりをどうしたらいいのかっていうこと。実は地元の人が大事で

この動画を見てください。コンサートをやってます。ここに一人の主人公がいます。この子がすごく不可思議な現象を起こします。
 

音楽が流れて、彼が踊り始めました。この子が 楽しそうにやっているので、全く知らない人が右からやってきます。そして一緒に踊り始める。彼は、後から来た人に丁寧に教えます。後から来た彼は、一緒に踊り始めると、他の人を呼び始めます。「楽しいよ」って。3人目4人目、今度は女の人も加わってくるんです。これ、数分の間に2~300人ぐらいまでに膨れ上がります。

つまりまちづくりってこういうことだと思うんですよ。最初に何かやりたいっていう人は変な人に見えるかもしれないんですけど、誰かが一緒に踊ってあげる、あるいは共感してあげるっていうのが凄く大事で、それをフォロワー」っていうんです。

この現実を見ると、地元の人間の一番大事な所っていうのは、応援するっていうことで。それも応援する人が少なかったらただの変な人たちなんですよね。だけど最終的に300人になっていくって言ったら、もうこれはまちづくりと同じですよね。

だからそういう風な形で、皆さん地元の人達でこの人たちを応援してあげて、好奇心とか安心とか野心っていう気持ちをぐるぐるぐるぐる回してあげる。楽しいこともあるよと、安心しなさい、私たちが応援してあげるからと。 サポートすると、自然発生的にぐるぐるぐるぐる回り始めるわけです。

まちづくりの成功事例

じゃあ実際の成功事例はっていうと。少し見ていきましょう。大阪の阿倍野区に文の里商店街っていう所があって、関西の電通さんがポスター作ったんですよ。

 



例えばこれ、「ポスターはよ作ってや、死ぬで」って書いてますが、ほんまに閉店なんですよこれ((笑))。鶏肉屋さんは「いいムネあります」。「いいモモあります」(笑)。薬屋さんは「アホにつける薬はあらへん」とか、店としては特に変わったことがないんだけれども楽しそうですよね。

 


同じく「楽しそう」っていうので、うまいことやっているのは、宮崎県の日南市の油津商店街っていうところ。

 

商店街の中でシャッターが閉まっているからボウリングをしてしまうとかね。あるいは自転車競争をしようとか、つまりもともと商店街ってのは楽しいところだよっていうところから作り直しはじめたところ、商店が蘇り始めたまちづくりでは有名な事例です。

 

でこれは、もう一つ四国の高松にある丸亀町商店街っていうのが、地元の地主さん達から50年間土地を借り請けして、商店街をデザインし直した。ガラッと人の流れが変わって、若い人たちがどんどん来るようになった。つまり、商店街の場所が悪いわけではないんですよね。

 

で、丸亀町商店街がうまくいき始めると、次どうなるか。この商店街から二地区先の商店街に、若い面白い子たちが集まり始めたんです。丸亀商店街の地価が上がったことで、周辺の商店街の家賃が下がったんでそこに面白い子達が集まって、起業家が集まってきた。

 

 

同じ事例が新潟県の沼垂(ぬたり)ってところにあります。ここでお店を出していた後継者の人がまちづくり会社を作って、ちょっとずつ空いた商店に身の丈起業家を巻き込んで増やしていって。もう30店舗ぐらい蘇った。デザインを意識すると、魅力がでてくるんですね。

 

 

あるいはこれ、イタリアの事例なんですけれども。普通だと、てんでばらばらい農家民宿をやるのですが、ここでは、レストランがまとめて予約受付する窓口となり、町そのものをホテル化するという「アルベルゴ・ディフーゾ(分散型ホテル)」っていうのをやってます。 昨年岡山県の矢掛町や大阪の大東市が、アルベルゴ・ディフーゾをはじめたり、日本でもすごく注目されている取り組みです。

 

久米島にも空き家いっぱいあるとおもいます。こういう仕組みができると、一箇所で受付をやってくれるので、楽になる。ちょっとしたデザインを入れてあげると、街がまた生き返ってくるわけなんですよね。

まとめ

 

これまでの話をまとめます。まちづくりとは、居心地のいい場所を増やしていくこと。過疎とは、みんなが利用する、たわいのない会話のできるお店がどんどんなくなり、居心地のいい場所がどんどん減っていくことだと理解して下さい。

で、街を再生していくためにやる気のある人たちを支援して、人と場とプロジェクトをぐるぐる回してあげる。そのために、安心の場を提供してあげて、面白い人がプロジェクトを、自由にやってみる。

地元の人間は何したらいいのかって言うと、それを手助けしてあげる、共感してあげる。それだけでいいんですよ、お金を出してどうのこうのって言うんじゃなくて。そうすると結果的に面白い場所になって、まちになっていって。外の人から見れば、人が魅力になる。

例えばうちの町なんか、久米島に比べれば、観光資源が少ないです。けど人の魅力で他所から人が来るんですよね。 例えば僕のところだけでも200人ぐらい来ます。そんな人がもっといれば、何千人っていう単位になってくる。 人が魅力になれば、関係人口とか、移住者が増える。それが街づくりなんだと。こんなところで、終わりにしたいと思います。

会場からの質問

質問:好奇心とか野心とかを回していくと、安心安全ベースの農耕民タイプの人も、好奇心・野心ドリブンで活動できるようになる、ということですかね?

大西氏:はい、そういうことですね。 要はみんな、好奇心や野心がないわけじゃないんですよ。最終的な判断をする時に安心を重視するっていうことで、安心しか考えないわけじゃないし、ぐるぐる回していくってのは大事ってことです。

質問:まちづくりとか地域活性を語る時に、人口増加だとか人口減少ということがよく語られますけれども、この人口の増減について何かご意見があれば教えてもらえればなと思います。

大西氏:基本的には、全国的に見ると人口を増やすってのはもう不可能なんですよ。どっかから人を取って来るっていうだけの話です。移住者を増やすっていうのは。日本の中で取り合いをするっていうのは、あんまりいい競争じゃないんじゃないかと。

それよりは、緩やかに減っていく、例えば今100人減ってるのが70人に減らすとかいうレベルにしていく。

 

その中で、土地が余ってくるわけじゃないですか、空き家とか。それをどうするか、ワクワクすることを考えた方が僕はいいと思っているので、 僕は人口が減るということは悪いことだと思っていません

例えば、僕は今、スマート農業っていうの九州でやろうとしてるんですけれども、人が減っていくとまとまった土地が手に入るので、大規模農業ができるようになるんですよね。そうすると機械が活躍してくれるんです。機械だと画像認識してくれるので、草取りもできるんですよ。農薬も一部だけに飛ばすこともできるんです。

 

だから機械化していけばいくほど、農薬を使わなくて済む。農薬を使わずにだんだん自然が豊かになっていくと、海が良くなるわけです。山からミネラル分が海の方に出ていってるわけなので。そう考えていくと、田舎ってチャンスがあるわけです。

つまり人口が減るということは必ずしも悪いことではない。それよりもつまらない方が大きな罪じゃないですかね。