久米島町民と移住希望者のための
久米島でのくらしが豊かになる
情報ポータルサイト

 

ソシオデザイン大西正泰氏が語る「まちづくりの基本原理」とは?【まちづくり講演会書き起こし①】

ソシオデザイン大西正泰氏が語る「まちづくりの基本原理」とは?【まちづくり講演会書き起こし①】

3/5(火)に開催したまちづくり講演会「久米島の『次の一手』を考える」~地方創生のその先へ~。講演内容を書き起こしました。来場くださった方はもちろん、当日来場できなかった方にもご覧頂ければ幸いです。

全3回に分けてお届けします。最初は、上勝町を拠点にまちづくり・起業家育成事業を手がける一般社団法人ソシオデザイン代表理事 大西 正泰(おおにし まさひろ)氏の話から。

 

「まちづくり」をどうやってすればいいのか?

大西氏:じゃあ改めまして、こんにちは大西です、よろしくお願いします。

今日は最初前半、僕が担当するんですけれども、どちらかというとまちづくりの仕組みについて担当して、後半のたつみ君の方は、実際の様子を具体的に深掘りしていくような感じで役割分担をしています。

で、皆さんちなみに、「まちづくり」って、何をしたらまちづくりだと思いますか?ちょっと考えてみてくださいね。

(「人を育てる」「まちをつくる」「人の幸せをつくる」「交流」「商業」「いいたいことやりたいことがスムーズにできること」などの声が上がる)

いいですね。なんか仕込んだみたいな感じになってますが(笑)。

今日は「まちづくり」をどうやってしていけば良いのか、という話なんですけれども、なかなか何をして良いのかって、ちょっと分かりにくいことが多いので、まずはそれを見ていきましょう。

徳島で起きている「まちづくり」

じゃあまずは、私の生まれ育った四国の徳島について。

徳島県はまちづくりで結構有名な所が色々あって。私の来た上勝町というところは、「葉っぱビジネス」という名前で、日本料理の上にのっている「つまもの」ってやつですね、青いもみじがあったりとか南天があったりとか、そういったものを生産している町です。

人口はどのくらいだと思います? 久米島より多いと思う方?少ないと思う方?そう、少ないんですよね。久米島が7800人くらいですね。

(「3000人」「6000人」などの声が上がる)

なんだかセリみたいですね(笑)。ちなみに1546人です(※2015年国勢調査)。四国で一番小さな町なんです。でも、葉っぱビジネスをやって、今2億6千万くらいの売上を出しています。

もう一つ有名なのがゴミの分別で、45分別をうちの町はやってまして。いろんな取組みをしてるんですけれども、この二つが一番うちの町で有名なとこですね。

また、お隣に神山町というところがあって、アーティストが世界中から集まってきたり。例えばこれ、カラオケ鳥居ってもので、去年の台風21号で倒れちゃったんですけど、330個くらいのスピーカーで出来てて、 Bluetoothで音楽が流せたりするんです。

あと、「サテライトオフィス」っていう、東京で活躍されている会社さんがわざわざ徳島に来て、事務所をつくって働く、みたいなこともやってます。徳島県全体で、どれくらいの会社が外から来ていると思いますか?55社来ているんです。

で、そのうちの、 5500人しか人口がいない神山町に、22社来ています。 久米島町でも十分できるぐらいのサイズ感ですね。こういったことが徳島県全体でもかなりたくさんの動きが起きていて、 全国でも先進地域の一つとして認識され始めたところです。

大西さん自身のキャリア

僕自身はですね、13年くらい学校の先生をしていまして。だからしゃべり上手でしょ(笑)?自分で言うっていうね、はい(笑)。小中高の先生をやってました。

で、いっときは製薬会社にいましてね、社長と気が合わなくて、リストラされるんですよね、残念ながら。それで地域再生の分野に入る。なんで、僕はキャリアとしては、教育が半分ぐらい、 地域再生が3割ぐらいの人生ですね。

で、実際何やってるのかっていうと、動画を後で見てもらうんですけれども、起業家を育てることで町を元気にしていく。「仕事がないない」って言うじゃないですか田舎に。だから仕事をつくる人を増やす。

そして空き家を再生してます。例えばこれ空き交番、リフォームしてメゾンドポリスっていう名前にしたりとか、日替わり店長がいるシェアカフェってのをやったりとか、色々やってきて、去年中小企業庁から賞を頂いたりしました。

あとサンスターさんや電通さんと組んだりとか、他のエリアとも地域連携しながら色々やってます。

過疎という思い込み

さて、ここからが本題なんですけれども、地方創生とか地域の再生とかを考えて行く時に、 意外とまあ、「思い込み」というものがあったりするんで、これを外していきたいのですが、ちょっとこれ見てみてくださいね。

皆さんこれ、なんでした?アルプスの少女ハイジですね。皆さんこれ、「過疎」なんですよね、集落数でいうと。でも皆さんこれ、過疎だと思いました?思わないですよね。幸せそうに暮らしていると過疎じゃないって、みんな思うんですよ

けど我々は人口が減っていると、「過疎は悪いこと」だと思わされてしまう。よくよく考えてみると、人がそこで幸せそうに暮らしていたらそうは思わないのに、人口が減っていると駄目になっているかのように思いこまされてる。そういうのをちょっとずつ剥がしていこうというのが、今日の課題ですね。我々は錯覚とか思い込みを無意識にしてしまう。

これはルビンの壷というものなんですけど、壷を「壷」として見た時には、背景は分からないですよね。 で、向かい合う人の方を見ると、人にしか見えない。過疎というのは経済的な見方で、「壷」を見ること。「人」のことを見たら、過疎だと思わない。これと同じ現象なんですよね。

まちづくりの起源は巣作り

そもそも「まちづくり」というものを改めて、思い込みを外すために考えていくんですけれど、いちばん重要なのは、僕らはやっぱり「動物」っていうこと。人間も動物じゃないですか。で、動物でまちづくりって何かって考えたら、巣作りなんです単純に言うと。

 


巣ってのは、基本的に食べられるのがいやとか、あるいは種同士で縄張り争いがあるとか。敵対心がある敵から、自分の巣に入ることによって自分の身を守るということが一番大事。 だから基本的に、自然にあるものをどんどんどんどん排除していって、安心安全に暮らせる場所を作ろうとするわけなんです。

「まちづくり」という言葉を聞いた時に、「安心安全」って言葉、よく聞きませんか?必ず町のホームページにも安心安全って書いてあるんです。 なぜまちづくりに安心安全とやたらうたうのかでいうと、 基本ベースがそこにあるからなんです。

けど、いろんな巣、いろんな家が並んでまちになった途端にいろんな問題が出てくるわけです。だから安心安全ってだけじゃダメで、何かをしないと、まちにならないんです。

次にいきます。人類の歴史を振り返ってみますと、昔の180万年前、人類最初の頃のイメージなんですけども、基本的に家族で住んでたわけです。このときって、住むところと働くところと遊ぶところが大体一緒なんです。で、食べ物が採れなくなったら移動する。

 

実際に今現在でも、南米とかアフリカの方へ行くと、同じように暮らしている人がいますが、みんなでそこで暮らせられる範囲での人数でしかいない。食料が取れる範囲の数でしか人間は増えなかったんです。

 

そこから、人間ができることが増えてきて、まちというのがどんどん大きくなってきた。つまり安心安全以外の所で大きくなってきた、ということなんです。

「安心安全」以外のまちづくりのメカニズム

何が安心安全以外のまちづくりの仕組みなんだろうかって考えた時に、分かりやすい例でいくと。僕が子供の頃、車は家族で1台でした。けど今は1人で1台。昔は家族で電話1台を使ってたんですけれども、今は1人1個。一人一人にお金を使わせたいわけです。 今の経済ってのは、みんなで 何かを使うよりは、一人一人がお金を使うように進歩してきたわけなんです。

 



家もそうなんです。 これメーカーさんが作っている家の間取り図なんですけれども、子供部屋って、最初っからあるんです。家族四人で住むじゃなくて、一人一人の部屋が最初からある。

 



そもそも昔だと外にトイレとか風呂とか全部あったんですけれども、各家庭ごとに家の中にある。車も電話もそうですよね。昔は村のみんなで使ってましたけれども、それがどんどん家の中にそろってきて、更に一人で揃えていく。そういう形に家もどんどん変わってきたんです。

 


それの究極系が団地というやつです。例えばこの一階にですよ、集合のキッチンがあって、そこで料理を全家庭分作ってくれたら多分だいぶ楽なのに、家族ごとにキッチンも部屋も人の人数分用意している、っていうのが我々の歴史なんです。

 



商店街もだんだんだんだんショッピングモールになったりとか、合理的に一箇所で使ってもらうようになっている。例えば、ショッピングモールって窓がないって知ってました?中の世界だけで完結しちゃうからです。さらに、家の中にまで進出しているわけです。ネットで買えるようになってきた。そういうような形で、我々は歴史を踏んできたと。

このままだとどんどん一人に

このままだとどうなるかって言ったら、一人でいることが心地よいようにどんどん設計されていく。人とコミュニケーションをとるのがめんどくさくなるんです。ですよね。電車の中だとずーっとスマートフォン見てるわけですよ。自分の一番居心地の状態にずっといれるように設計されているので、人とそんなにコミュニケーションを取る必要がない。

で、人とコミュニケーション取るのがどんどん減っていったらどうなるかって言うと、結婚する必要もなくなってくる。あるいはご飯を食べたりするのも、一人で食べられるように、コンビニに行ったら全部一人用のものが売っていたりする。

人と何かやらなければならないことを意図的に作っていったりとか、そういうのが幸せだよっていうのを作っていかないと、多分まちってどんどん個人の世界、一人の世界に入ってしまうんです。

「喫茶ランドリー」

今まちづくり業界の中ですごく注目を浴びてる、去年の1月に出来た「喫茶ランドリー」っていうのがあるんですよね。で、それをちょっと見てもらいながら、コミュニケーションを取るということが、まちづくりの核なんだなっていうのを見てもらいたいと思います。

ここは周辺全部マンションか町工場なんです。本当に人が集まる場所がないんです。駅から10分ぐらい歩いたところにあります。

先々週僕も久しぶりに行ってきたんですけど、やっぱり楽しい。何が楽しいかっていうと、ちょうど犬を連れた3人ぐらいの人たちが来て、「犬の誕生会をやりたいんですけど、ここ使っていいですか?」みたいな話があって。「いいですよ」ってすぐ、5分ぐらいで話がまとまっちゃうんです。

ここって、去年の1月にできてようやく1年越えたくらいなんですけども、去年だけで200ぐらいイベントをやっているんです。店の人が自分でやってないですよ、お客さんや人が来てイベントをやってる。そのくらい皆さんが使っている。

単純に、洗濯コインランドリーとカフェをくっつけたからじゃなくて、ここは自由に使える場っていうのを、最初の作る元々の目的にしているから、人が集まる。僕ここで、何回か講演したこともあるんですけれども、本当にそこら辺の人が来るんですよ。普通はコーヒーを飲むためにカフェに行くんですけども、ここは人に会ったり、しゃべったりするために行ってるんです。そのためにコーヒー代を払ってる。

洗濯も家でやってたらすごいつまらないじゃないですか。特に主婦の方だと、子供を見ながらずっとやらなきゃいけないですけれども、ここに来たら友達と一緒に洗濯ができる。洗濯物を預けて、他の仕事をすることもできる。洗濯の間は、店の人が見ててくれるんです。

だからみんなここを使って使って、どんどん友達ができて、行ったら必ず誰か紹介してくれるんですよ。行ったら誰かと会える、行ったら誰かと友達になれる、というワクワク感があるわけです。

これ、去年グッドデザイン賞とったんですよ、1年も経ってないのに。ここに僕はヒントがあると思うんですよ。 こういうのを作っていくのがまちづくりってやつの一つじゃないのかなと。

サードプレイスがないと人の仲が悪くなる

で、こういうのをまちづくりの業界では「サードプレイス」って言い方をします。1番目の居場所は家ですよね。で、2番目の居場所は職場。 3番目っていうのは図書館だったりカフェだったり、色々あると思うんですけど、自分の好きな居場所。この3番目の居場所をサードプレイスっていう言い方をしていて、過疎ってなにかというと、サードプレイスがなくなっていくことなんです。

例えば上勝町で言うと、8年前に僕が来た時にはお店はほとんどないんですよ。当時1900人くらいいましたけど。「家と職場」だけになっていく。東京と一緒なんですよ、田舎なのに。家にいて、満員電車にのって、職場に行って職場のメンバーと会って、帰っていく。そういう東京のスタイルと、居場所がなくなった田舎というのは全く一緒なんです。コミュニティがだんだん分かれていく。

そうするとどうなるかで言うと。コミュニティっていうか、色んな所をぐるぐる回っている人がいないと、やっていることがわかんないから噂話が多くなって、いいこと悪いこと全部尾ひれがついていく。そうすると仲が悪くなるんです。それって良くないですよね。

居心地のよい場所で商売が生まれる

家もみんなが来やすいように、 あるいは職場もみんなが来やすいように、居心地よくオープンにしていく、っていうのが、サードプレイスを広げていく、ということなんです。

 

で、居心地がいいと、人が集まってくるんですよね。例えば「シティリペア」っていう街を直していこうっていう運動があるんですけれども。そのうちの一つで、たとえばカナダのバンクーバーで、建物をいじるとお金がかかるので、 道路のところにベンチをたくさん置いていった。そうすると、いろんな世代の人が座っていく。そして会話をしたり。

 


あるいはこれ、ニューヨークのマディソンスクエアガーデンの事例ですけれども、 いろんな人が座れるように椅子を置いていったんですよね、プラザプログラムっていう名前でやってるんですけれども、いろんな人が座ってますよね、思い思いに。

そして、食べてますよね、 つまり、居心地がいい場所になると、次ね、食事し始めるんですよ。ってことは、飲食業のチャンスが生まれてくるんです。 居心地が良くてみんなが集まる場所には、飲食店ができる可能性がある

 


次は、ニューヨークにブルックリンっていうところがあるんですけれども。アーティストの人たちがたくさん住んで、自分の家をどんどんリフォームしたり、綺麗にしたりしていくことによって、人がどんどん集まっていったりとか。

 


あるいは佐賀市の実例ですけれども。ある建築家の方が、駐車場を潰して芝生を植えて、コンテナハウスを置いた。コンテナハウスの中は図書室みたいに本を置いた。そうするとどうなるか。

人が集まり始めた。芝生を植えたんで、近所の保育園、幼稚園の子たちが来るようになった。そうすると、T シャツを作る起業家がやってきた。

今までまちづくりっていうのは、仕事を作らなければいかんというので、コールセンターを呼んだり、仕事を取ってきたり、あるいは工業団地を持ってくるみたいなことをやってたんですけれども、本当は、みんなが楽しいことをしてるから商売したい人が集まってくる、っていう順番なんですね。

けど、我々がやってきたことは、順番が逆だった田舎には仕事がないから、仕事のある人達を連れて来たらどうにかなると思ってたんですけど、そもそもの順番が逆。

市場の歴史がそうなんですよ、人がたくさん通って、賑やかになってる所に市場ができるんです。だから、市場ができたから人が集まるんじゃないんですよね。人が集まるから市場ができる。

楽しい所じゃなかったから、全国で商店街は駄目になってるでしょ。もし楽しい商店街だったら、人は集まるんですよ。人が集まらないってことは、魅力がないからです。魅力を作っていくってのがまず最初なんですよね。

 


あとこれ、北九州市のメルカートっていう所なんですけれども、ビル一棟まるまる空いていたのを、建築家の人たちが手直しして。

手直しする時に工事費が出せないから、ここに入居したい起業したい人を集めて、月2万円ぐらいでお金をバッと集めて、そのお金でだいたい5年ぐらいで改修費が返せるようになって。直してみたら、今もいっぱいいます、ここに入りたい企業家の人が。

 


つまり何らかの楽しい場所、居場所ができることによって、新しい動きがどんどんできてくる。それが多分まちづくりなんだろうと思うんですよね。